東京地方裁判所 昭和44年(ワ)11358号 判決
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【判旨】
請求原因2の(一)(二)の事実及び(三)のうち、原告が昭和三三年七月一五日、三一六番の六の土地を訴外鈴木善正から買受け取得したことは、原告と被告かつ子ら四名との間に争いがなく、また被告F・H・ブレーン、同まり子との関係においても、<証拠>により右の各事実を認めることができる。
しかして、<証拠>を総合すると、次の事実が認みられる。
被告F・H・ブレーンは、亡妻たかの死後、葬儀費の一部に充てるため、義妹被告かつ子に対し、分筆前の三一五番の五の土地の一部につき他に売却する代理権を授与したところ、同女は右土地を分筆したうえ三一五番の六の土地を訴外鈴木善正に売渡したが、被告F・H・ブレーンに右売却代金を送金しなかつた。原告は、昭和三七年一一月頃、被告かつ子夫妻から不動産仲介業者である天野孝夫を通じて、原告所有地の裏隣りに存する本件土地を買取つてほしい旨懇請されて前記売買契約を締結するに至り、その際売主側から本件土地の登記済権利証の交付を受けたが、所有者である被告F・H・ブレーン及び同まり子の売渡承諾書、委任状等登記関係書類については、同人らが在米中のため売主側においてこれを完備する旨の口約を信用してこれを受取らなかつた。また右所有者らに対し、直接売渡の意思を調査、確認したりなどもしなかつた。被告かつ子夫妻は、本件契約当時、本件建物に居住して亡父兼太郎を扶養し、本件土地の公租公課を代納していたので、本件土地を処分して他に転居し、事業資金を入手しようと考え、所有者である被告F・Hブレーン、同まり子には無断で、原告に対し本件土地の処分権限があるように虚偽の事実を告げて売買契約を締結し、かつ子の夫徹は、原告より右代金のうち金二〇〇万円を受領するや、翌三八年二月頃から所在不明になつてしまつた。
右認定の事実関係からすれば、仮りに原告が右契約にあたり、被告かつ子に本件土地を売却する権限があるものと信じたとしても、本件行為はかつ子の三一六番の六の土地売渡しの代理権消滅後すでに五年を経過しており、本件契約は従前の代理権の範囲に属しない行為であることは明らかであるから、買主としては事前に所有者につき売却の意思を調査確認するなり、その売渡承諾書、委任状等代理権を証する書類の交付を受けて、売主が本件土地を処分する権限を有するかどうかを認めるべきところ、原告は右のような措置を執らず、単にかつ子の自称代理権を軽信して本件契約を締結したに過ぎないから、原告は、かつ子の代理権の消滅等を知らなかつたことについて過失があるものというべきである。
したがつて、原告主張のように、被告かつ子に本件土地の所有者を代理してこれを他に売却する権限があると信ずべき正当な理由があつたものとは到底いえないから、原告の右主張も採用できない。
(土田勇 横山匡輝 石原直樹)
目録
東京都大田区南雪ケ谷一丁目三一六番五(旧東京都大田区雪ケ谷町三一六番五)
一 宅地 210.57平方メートル(63.70坪)
同番所在
一 木造瓦葺二階建居宅 一棟(未登記建物)
床面積 一階 約六六平方メートル
二階 約三三平方メートル